実際の相続税額の計算方法を国税庁のHPに記載されている参考例で示します。
相続人が配偶者と子ども2人で、相続財産が1億2,000万円、債務・葬式費用が2,000万円の事例です。
まずは、それぞれの課税価格を計算します。この例では配偶者が1億円、子ども2人がそれぞれ1,000万円を相続すると仮定します。また、債務・葬式費用を配偶者が負担します。
(出典)「相続税の申告のしかた(平成29年分用)」9ページ
債務・葬式費用は2,000万円であるため、配偶者の課税価格は【1億円-2,000万円】で8,000万円となります。子ども2人は変わらず、それぞれ1,000万円です。
よって、課税価格の合計額は1億円です。
【各人の課税価格の計算】
妻 1億円 - 2,000万円 = 8,000万円
子① 1,000万円 - 0万円 = 1,000万円
子② 1,000万円 - 0万円 = 1,000万円
【課税価格の合計】
8,000万円 + 1,000万円 + 1,000万円 = 1億円
次に、課税遺産総額を計算します。
課税遺産総額は、課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を差し引いたものとなります。
遺産に係る基礎控除額は【3,000万円+600万円×法定相続人の数】
であるため、この例では【3,000万円+600万円×3人】で4,800万円です。
したがって、課税遺産総額は【1億円-4,800万円】で5,200万円となります。
続いて、相続税の総額を計算します。まずは課税遺産総額を法定相続分で按分します。配偶者と子どもの場合、相続の割合は1/2ずつとなります。したがって、配偶者が2,600万円、子どもはそれぞれ1,300万円となります。次に、それぞれの取得金額に対して相続税率をかけ、控除額をひきます。税率や控除額は、以下の一覧表のように取得金額によって異なります。この例の場合、配偶者・子ども共に税率15%、控除額50万円です。それぞれの相続税を計算すると、配偶者が340万円、子どもがそれぞれ145万円ずつとなります。これらをすべて合わせた630万円が、相続税の総額です。
最後に、相続人それぞれが納付すべき相続税額を計算します。相続税の総額を計算するときには法定相続分で按分しましたが、相続税の計算では相続人ごとにそれぞれが取得した課税価格の合計額に占める割合で按分します。この例の場合、課税価格は配偶者8,000万円、子どもがそれぞれ1,000万円であるため、割合は80%、10%、10%です。
したがって、配偶者の相続税額は【相続税の総額630万円×80%】で504万円、子どもはそれぞれ【630万円×10%】で63万円となります。
【各人の納付すべき相続税額】
妻 630万円 × 80% = 504万円
子① 630万円 × 10% = 63万円
子② 630万円 × 10% = 63万円
配偶者には配偶者の税額軽減の特例(※)があり、この場合、配偶者の課税価格が1億6000万円に満たないため、配偶者の相続税額の全額に対して配偶者の相続税額の軽減を受けることができます。最終的にそれぞれが納付すべき相続税額は、配偶者が0円、子どもが1人63万円、合計126万円です。
※配偶者の税額軽減の特例
相続や遺贈によって財産を取得した人が被相続人の配偶者である場合には、その配偶者の相続税額から、次の算式によって計算した金額を控除します。
① 課税価格の合計額に配偶者の法定相続分を掛けて計算した金額又は1億6千万円のいずれか多い方の金額
② 配偶者の課税価格(相続税の申告期限までに分割されていない財産の価額は除かれます)